Smile With You TOP >> 被災者の声 >> 2011年08月04日 被災者の声
東浜地区災害対策本部 本部長 豊島富美志さん

以下が豊島さんのお話です。

東浜対策本部は、牡鹿半島西側(福貴浦・鹿立・牧浜・竹浜・狐崎の5地区)が被災したため、東浜小学校を避難所とし、そこに併設されています。
この5地区は海岸沿いであるが被害状況は、全滅のところもあれば50%壊滅のところもあり、また狐崎は97%が無事、と様々な状況です。
私自身(豊島さん)も自宅は津波の被害にあいました。
自宅は約10mの高台にあり、チリ地震の時に津波は来ませんでしたが、今回の津波では約10mの高台にもかかわらず被害にあってしまいました。このとき妻は自宅から山伝いに東浜小学校まで避難したということです。
私は10mの高台ということで安全だろうと考え、妻を家に残、船を守るために沖まで出ました。
たくさんの人があの状況の中で様々なことを考え、様々な行動をとったと思います。
その中で今回の震災の津波はあらゆる人々の想像をはるかに超えた魔物だったのだと思います。

東浜地区の逃げ延びた人々は東浜小学校に避難し、避難生活が始まりました。
まず地域住民で一致団結して木材を集め自分たちの手で仮設トイレを設置しました。
救援物資に関しては、4月終わりまでは自衛隊に要望を伝えると、滞りなく物資の配給はされていましたが、GW明けから自治体の管理に代わると同時に救援物資の配給が届かなくなってしまいました。1日におにぎり1個やパン1個と水という日もありました。
そんな状況を県や市にもう少し栄養バランスを考えた食事を供給してほしいと改善の要望を出しました。
その後ボランティアの人が様々な食糧を提供してくれ、炊き出しも同じ方々が何度も来てくれたり、その輪が広がりたくさんの方々が様々な炊き出しをしてくれました。本当に感謝しています。
震災発生後から現在まで、東浜地区の救援物資要請・要望などは本部長として一括で取りまとめ、必要最低限に限定し物資の調整を行って依頼しています。たくさんのボランティアの方が救援物資をもってきていただいていますが、東浜地区のことだけでなく被災者全体のことを考えると、小規模で知られていないような避難所や、自宅で生活している人、物資が足りていないような避難所も多々ありますので、気持ちはありがたく頂戴しますが物資は他の困っているところに回してほしい、とお願いしました。せっかく来ていただいたのに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
救援物資に関しては、必要以上にボランティアや善意に甘えてしまっては、自立していくための心が弱くなってしまう可能性があると思います。あれもこれも欲しい、とどこまでも弱くなってしまうのが人であると実感しました。そう考え、本部長を任されたからには地域全体のことを考えて鬼にも仏にもなる、と行動しました。復興とはあらゆる被災者の心が同じ方向を向いて進んでいくことが大事です。今後何かあれば、みんなでトイレを作った時の一致団結を思い出してほしいと思っています。

道路に関しては、石巻周りの道路は遮断されていて、女川周りの道路しか使えず満潮の時には地盤沈下してしまっているために冠水してしまうような道で不便で仕方ない状況でした。しかし、県・市に復旧の依頼をしても動いてもらえず、水産庁の役人さんが訪問してくれた際にその状況の話をしたらすぐに復旧させてくれました。
今では移動販売も来ますが、地域住民で使用する人はほとんどいません。最低限必要なものは自分達で調達する、という気持ちで生活しています。

仕事に関しては、漁業中心の地域ですが、船も道具も津波でだめになってしまい、船が大丈夫でも道具がなくて漁ができません。船を動かさずに放置しておけば船底は汚れ、スピードは出せなくなり、燃費は落ちる、と悪いことだらけです。船底の清掃をするにも小型船であればクレーンで吊り上げての清掃も何とか可能ですが、大型船になると造船所で行うしかなく、要の造船所が使える状況ではありません。
現状は、港・海岸のガレキ撤去を一人日当¥1,1000で行っています。地域住民の「本部長は、本部長の仕事を優先してほしい。」という言葉で、災害対策本部の仕事に専念しており地域住民みんなが代わりにガレキ撤去をしてくれている状況です。

今後は、地域住民みんなが仮設住宅に移住していくことになります。この地域の住民とコミュニティがそのまま入るので大きな心配はしていませんが、今までのような組織ではなくなるので仮設住宅ごとで再度組織を作っていき、復興への一歩を進めていくと考えています。その時にボランティアの方々が物資ではなく、ただ住民の不安や心配事を聞く、などの話し相手になってもるだけで、気持ちが救われることもあると思います。地域の人でしか話せないこと、ボランティアの方々だから話せること、様々あると思います。

9月中旬で東浜災害対策本部は解散する予定ですが、この地区では、8月の夏まつりと1月の獅子風流の伝統行事があり、今年も何としてでも開催するつもりです。

行政にも知られていない避難所もまだまだたくさんあると思います。
そんな中でも東浜地区に来ていただいたたくさんの方々には、感謝しきれません。
しかし、自分の家族は大切にしてください。ボランティアのために自分の時間を使いすぎずに家族を大切にしてください。その中にほんの少し時間があって話しができるだけでもうれしいです。

今回の東日本大震災であらゆる人の優しさに触れとても感謝しています。本部長という立場になり自分自身何もわからない中、一生懸命にその場面で勉強して災害対策・防災などの面を考えてきました。恩返しになるとは思っていませんが、この経験を今後に活かしていただけるならいつでもどこでも自分の経験をお話しさせていただきます。